2007年9月30日日曜日

タビオ-まとめ

9月28日終値¥2,060


タビオのまとめであるが、タビオのどこが「良い企業」であるのか、


やはりドメインを絞っていること、そしてそのドメイン(靴下)に対するこだわりは強い。

これら(ドメインの絞込み、こだわり)は企業経営において今更言うまでもない基本と言えるであろう。その中でも「靴下専門企業」という独自性や、高度なSCM(サプライチェーンマネジメント)も見逃せないポイントである。


しかし、このタビオという会社が持つ特徴はやはり、


国産、そして日本へのこだわり


であろう。このこだわりの何がすごいか、というと、やはり近年のグローバル化、ユニクロの成功、そして中国産製品の品質向上などの流れの中で、生産を海外、特に中国に委託した方が格段にコストを抑えることが出来て高い収益性を容易に上げることが出来るのは明確である。タビオほどの企業規模を持てばそのメリットもより大きいであろう。


しかしタビオは国産にこだわった。そして今も、これからもこだわっていくであろう


私はタビオの社長、越智直正氏の講演を聴きに行ったことがある。彼の日本の靴下に対するこだわりはもちろん、「日本」そのものに対するこだわりはすごいものがあった。冗談めかしく、外国人や海外製品を批判しつつ、


「日本の製品(靴下)はすごいんだ。日本人はすごいんだ。(日本人は)もっと誇りを持て!」


という、メッセージを盛んに発していた。そいうことをただ言うだけでなく実際に企業経営で実践して証明している(国産にこだわって靴下業界一人勝ち)。


さて、今後のタビオに期待することは、


新入社員座談会のページにこんなコメントを見つけた。


小学生のころ、公文の先生がクリスマスにいつも靴下をプレゼントしてくれていた思い出がありますね。


クリスマスの靴下、プレゼントのため、飾りのためだけの靴下をクリスマスの時期だけ生産・販売したらどうだろう。


「靴下は(常に身体全体の体重がかかって)過酷な生涯を送る」


と社長は言っているが、クリスマスの時だけ、その過酷な労働から解放してあげて、光のあたる輝かしい時を靴下に与えてあげたらどうだろう。夢のある、タビオにしか出来ない面白い新規事業であると思うが。


今後もあのパワフルな社長と、素晴らしいタビオの社員達が靴下に愛情を注ぎ続け、素晴らしい靴下を市場に提供し、「靴下」の地味なイメージを変えていくことを強く期待している。

2007年9月29日土曜日

タビオ-財務

9月28日終値¥2,060

タビオの財務分析を決算短信より行ってみた。

個々の項目をチェックしていっても特に目立ったところはない。印象としては、問題のない、小規模な上々優良企業という感じである。

しかし、前期からの成長率を見ると、これは特筆している。

タビオの過去5年間の売上と経常利益(個別)の推移を見ると、

02年売上79億、経常2.0億
03年売上84億、経常5.4億
04年売上84億、経常4.8億
05年売上91億、経常4.9億
06年売上110億、経常利益10.1億

05年までは堅調な営業成績ではあるものの、多少停滞感があることも否めない。しかし05年から06年に懸けては、売上の20%ほどの増加もそれまでの推移から見ると突然であるが、何より営業利益、経常利益、純利益と全ての利益分野で倍増を成し遂げている。





では一体06年期(07年2月期)に売上、利益が急増した理由は何か?

残念ながら、公開されている損益計算書では読み取ることが出来ない。原価率の低下と、販菅比率の低下によるものだが、その内訳は明確でない。

しかし05年期から06年期にかけての原価率の低下は約2%(49.6%から47.5%)、販菅費(販売費及び一般管理費)の低下率は2%弱(45.6%から43.9%)ほどである。

要するに売上の20%の増加(これは容易ではないが)に加え、原価率と販菅費を2%下げるだけで利益を倍増することが出来る

という、一種の経営上のマジックのようなものを見せてもらった(もちろんそれぞれの分野での地道な努力や経営の合理化策などが隠されているのだろうが)。

あえて経営分析するのであれば、連結では売上が21.5%増加し、急成長過程にあるにも関わらず、在庫(商品)増加率は20%以下(19.7%)に抑えているところである。商品回転率も23.09(06年期)と日数にして15.9日と一ヶ月に2回転近くしている計算になり、非常に優秀な数字である。タビオは今期も20%~30%の成長を続けており、このような堅実な在庫投資で高い成長を遂げていることはまさに高度なSCM(サプライチェーンマネジメント)を実証している

タビオの決算短信を見ていて面白いことに気づいた。

経営目標のところで、「売上高経常利益率、国内シェアともに11%を目標とする。」とあり随分、半端な数字だな・・・と感じたのだが、

良く見るとタビオの資本金(経営者がある程度任意に決めることが出来る)は、
333,444千円
である。

発行済み株式数は
6,668,880株

きっと社長は並び数字が好きなのだろう。財務諸表分析をしていてこういうちょっとした経営者の遊びを見つけることは、とても楽しい。またこういうのは大企業では中々なくて、本当につい最近まで中小企業だったんだな、という匂いがしてまた良い。


さらに東京事務所の電話番号は
03-3323-7111

2007年9月23日日曜日

タビオ-ブログ

9月21日終値¥1,905

タビオも企業としての公式ブログは存在しないようである。商品的にも、また人材(採用)に対する意識が強いことからも公式ブログを戦略的に活用できるのではないかと感じる。

しかし公式HPの中に


などのページがあって、内容も非常に厚くなっている。このようなコンテンツをブログとして、各社員の言葉や関係者のコメントとして時系列に情報を積み重ねていけば面白いと思うが。

中でも新入社員座談会のページで、

司会:谷 タビオはどんな雰囲気の会社ですか?
大川 個性の強い人間の集まり。良い意味で、ですよ。
挽野 「大阪だなぁ」と思うような独特の雰囲気があります。(笑)


上のような会話があったが、大阪の会社というのをもっとアピールして(社長は愛媛出身だが)、今元気のない大阪を活気付けるランナーとしてもがんばって欲しい。

その他タビオ関連のブログとして、

http://yuki.cocolog-nifty.com/daily/2007/07/post_b876.html
こちらのブログでは私のようにいろいろな企業を研究しているようである。確かにタビオは研究に値する面白い企業である。

大和総研の6月27日付けレポートでは、タビオの好調の理由の1つとして、前年度の暖冬により同業他社は過剰な在庫を抱えており、オーバーニーやレギンスといったトレンドアイテムの積極生産に踏み切れないできてしまっている、と書いています。  消費〜生産直結型の、タビオの強みが出ている格好ですね。

やはり注目すべきはきめ細かいSCM(サプライチェーンマネジメント)であろう。

http://ameblo.jp/ffggss/entry-10026936087.html
こちらのブログも興味深い企業としてタビオを分析しているが、

消費者独占力のある商品やサービスを持つ企業を探し当てます。具体的には、マーケティング手法の4P分析を使って、消費者独占型企業を発掘します。作者はこのバフェット流投資を実施し、4年で150万を1000万以上に増やした実績があります。

上のように、バフェット銘柄(長期投資に値する優良企業という意味としてとらえたら良いのだろうか)として、タビオを紹介している。


http://peugeot.jugem.jp/?eid=450
こちらのブログはタビオのアフィリエイトプログラムに参加している方のようである。
敬老の日の靴下プレゼントキャンペーンのようだが、

ご希望の方には期間中、「ありがとう」という言葉がいっぱい敷き詰められた、Tabioオリジナル風呂敷で靴下をお包みしてお届けいたします。

ネット戦略もきめ細かい。

2007年9月14日金曜日

タビオ-経営戦略Ⅱ(サプライチェーンマネジメント)

9月14日終値¥1,854

経営戦略:WHO(誰に)、WHAT(何を)、HOW(どのように)の続きで最も重要なHOWの部分だが、

国産品を、製造協力会社との緊密な連携によって、市場の流れに合わせて小口調達、販売する。

要するにSCM(サプライチェーンマネジメント)のお手本と言える、協力会社との素晴らしい連携によって、効率的なシステムを築いている。まさにタビオの成長の最もコアとなる部分と言えるであろう。

最初にタビオを靴下製造・販売の会社として紹介しているが、タビオ自体、実は製造は行っていない。(研究や高級品生産の工場は持っているが)





上の図にあるように、タビオとは商品の生産企画を行っている組織であり、そこから「靴下屋」を始めとする自社系列小売店に商品を卸す形となっている。実際の生産は協力工場で行っており、ユニクロなどで有名なSPA(Speciality store retailer of private label apparel)の典型とも言える。

しかしユニクロと違う点は、(ユニクロが主に中国の協力工場に生産委託してコストを下げているのに対し)、

国内生産にこだわっている

ことである。タビオの社長の理念の一つに「日本の靴下の品質の高さを世界に知らしめたい」というものがある。しかし、アパレル業界が中国産に席巻される中でも特に顕著に中国生産のメリットがあるように思われる(デザインよりも価格、大量生産)のが靴下であるが、そこで勝つのだから驚きである。

国産によるSPAを成功させている秘訣は大きく2つ上げられる。

①徹底した在庫管理・小口生産

http://tabio.com/jp/corporate/about/network/
このページで紹介されているように、タビオでは市場により近いところで生産を行うことで市場のトレンドを反映し、また小口生産(靴下は通常大量ロットでの生産でコストを下げている)で商品補充していくことで、在庫に関しては極力神経を配っている。

現場での正確で細かい販売情報を得るために、タビオはコンピューターシステムの普及する以前から下のような努力をしていたというエピソードが紹介されている。

靴下に管理カードを挟んでおき、商品が売れたときにレジでカードを抜き取る。カードをまとめて一括して本部に送ってもらい、本部で数量を計算するというものです。販売数量を正確に把握でき、販売員の作業負担は大幅に緩和されましたが、取引先が1374店舗にまで増えるにつれ集約作業が増大し、今度は本部の営業が集金に回る時間もなくなってしまいました。

今ではもちろんCSM(Customer Service Management?)という物流センターを協力会社とともに組合を設立して高度な物流管理をしているが、それでも社長は言っていた。

私は40年以上この世界で商売やってるが、作った商品は必ず足りない、または余る。作った分だけぴったり売れたことは一度もない!

これだけの在庫に関するこだわり、厳しさが高いレベルのシステムを産み出すのだろう(中小企業でも多くの経営者が自らの在庫管理が完璧だと錯覚しているはずである)。

もう一つのタビオの秘訣は、

②徹底した機械化

であろう。とにかく機会で出来るものは、徹底的に機械化する。タビオではいわゆる後工程といわれる、靴下のペアリング(2つをまとめる作業)、パッキング(袋に入れる作業)、シール貼りなどの作業まで一括して機会で行うことの出来る設備を協力工場に備えている。

またリンキングという工程が靴下製造においては重要らしいが・・・

参考:
ロッソ・リンキング
開いたつま先を縫合します。ミシンで一直線に縫い合わせる「ロッソ」と靴下の編目を一目ずつ拾う「リンキング」という2種類の手法があります。リンキングで縫製した靴下はつま先に山がなく、履いたときのゴロゴロ感がありません。


これまで機会で行う夢の機械をタビオは開発したようである。


国産にこだわり、靴下でとことん勝負するタビオ・・・靴下の会社なのに、クールな会社である。









タビオ-経営戦略Ⅰ

9月14日終値¥1,854

タビオの経営戦略において、ドメインは明確である。

靴下(とその関連製品)のみを売っていく

ということであるので、いわゆるWHO(誰に)、WHAT(何を)、HOW(どのように)のうちのWHATは決まっている。また「靴下屋」などの小売店の屋号からも、消費者に対するメッセージも明確である。靴下の国内市場規模は4000億円程度と言われる。

ちなみにタビオは靴下や女性用タイツの他にスパッツ(主に女性用)も取り扱っている。一見ドメインを逸しているかにも見えるが、ストレッチ素材を使う目立たない脇役という点で靴下と共通点がある。また靴下に比べて単価も高く、「金のなる木」的なイメージもある。

次にWHO(誰に)であるが、

ターゲットは靴下を履く全ての消費者

と言って良いだろう(成長段階ではターゲットを特に女性に絞っていたが)。「靴下専門店」というと随分狭い市場で勝負しているなあ、というイメージを持つが、これが盲点で、実は靴下というのはほとんど全ての人が着用するもので、ターゲットは市場全体、と非常に広い。

あえて言うならば、タビオはもともと靴下卸売り業として成長してきたが、現在は100店舗を越える直営店を持ち(直営店128店舗、フランチャイズを含め総計268店舗、07年8月末)、ターゲットをエンドユーザー(最終消費者)にシフトしている。また、イギリスに5店舗を出店するなど、市場を世界に広げている。

最後にHOW(どのように)、これは複雑である。

複雑だが、非常に重要な部分である。ので、次回にまわす・・・

2007年9月9日日曜日

タビオ-経営理念

9月7日終値¥1,762




この会社の経営理念は上のようにHPのスピリットのページに表示されており、とてもユニークである。

見えにくいので下にコピーすると、

凡そ、商品は造って喜び、売って喜び、買って喜ぶようにすべし、
造って喜び、売って喜び、買って喜ばざるは、道に叶わず。(二宮尊徳)


と書いてある。「道に叶わず」などとあるが、この社長は随分と仏教を深く信仰(二宮の報徳思想では仏教・神教・儒教の概念が含まれている)しているようで、ところどころにこのような、仏法のような言葉が出てくる。昨今、よく企業経営者などの不祥事がニュースになるが、仏教に限らず、信仰心の強い経営者は悪いことはしない、という感じがする(偏見かもしれないが)。日本はやはり信仰心は薄い国だし、どうしても利益追求(金儲け)が強い起業モチベーションになってしまうし、逆に金銭欲のない人種(特に最近の若者)にとって、起業する意味というのは見つけるのが難しい。

自ら事業を起こして、生涯生活を支えることは並大抵のことではない。しかし、企業社会が成熟した現代に生き残った日本企業に勤めれば(サラリーマンになれば)、例え転職で渡り歩いたとしても、ある程度の豊かな生活は保障されている。うまくいって大企業の幹部などになれば、年収数千万円は夢ではない。要するに生活を考えて、金銭計画を立てて人生設計をしていくならば、起業リスクというものはあまりにも大きい。

とにかく「この世の中を良くしたい」、「自らの存在を(アイデアを)この世に残したい」、または「人を助けたい」などという、ある意味宗教心のようなモチベーションがなければ起業は出来ないし、何より重要なのは、

金儲けを夢見て多くの若者が起業した60年代、70年代の企業の中で、生き残ったのがこのタビオ(68年創業)のような精神的な理念を創業時からしっかりと掲げていた企業だった、

ということである。

また補足すると、上の理念の中でやはり「造る」という概念がしっかり入っていること、ものづくりに対する気持ちの強い会社である。


また社長の挨拶のページの一番最初に、

なんていう言葉がある。最初は正直よく意味がわからなかったのだが、サイトのいろんなページを読んでいるうちにわかってきた。要するに

「靴下というのは(体重が思いっきりかかって、擦り切れて、ひどい目にあっているのに目立たない)かわいそうな存在である。靴下の気持ちになって仕事をしよう」

いう意味であろう。ちょっと普通では想像の及ばない、すごい視点を持った社長である。

2007年9月5日水曜日

タビオ



9月5日終値¥1,830




今月は靴下製造・販売のタビオを分析する。


この企業には以前から注目していたが、今期に入って株価も急上昇している。既存店の売上が引き続き好調のようである。




今まで企業をいろいろ分析していると、企業が大きくても小さくても、




成功している企業に共通して言えるのが自社の進むべきドメインを知り、そしてそのドメインで徹底的に戦っている、




ということである。その点このタビオはわかりやすい、創業以来、徹底して靴下(と女性用タイツなど)ばかりを売り続けている企業である。




「ニッチを攻める。」なんていうセオリーは誰でも口にすることだが、まさか靴下だけのアパレル企業が、上場企業に育つなんて、誰も(おそらく越智社長も)考えなかっただろう。




このタビオが靴下だけでどれだけ売っているかというと、




19年2月期


売上     115.78億円


営業利益    9.93億円


純利益     5.27億円


売上高営業利益率 8.6%




この狭い領域で100億円を超える売上を上げているだけでなく、内容(利益率等)も抜群の優良企業である。英国の有名百貨店に出店するなど海外進出にも積極的で、また今期も既存店ベースで高い成長を続けている。