2007年8月31日金曜日

Coca Cola Co.-まとめ

8月30日終値$53.40


Coca Cola の株主重視の姿勢は、日本的に見ると行き過ぎのようにも見える。


稼いだキャッシュの90%近くを配当と、自社株買いという形で株主還元しているのである。

裏返せば、成長投資に回す資金が少なすぎるとも言える。


しかし、Coca Cola の武器はなんと言ってもその巨大なるBrand Value (ブランド価値)と、non alcoholic bevarage としてのドメインを120年の歴史の中で、頑なまでに守り続けてきた保守性である。大金を投じて拡大戦略を取るような必要性もなければ、企業としてのベクトルもそこにはない、と言える。


ちなみにCoca Cola は80年代(1982)に一度、Columbia Pictures とColumbia Pictures Television
という映画とテレビの2つの巨大メディア企業を買収している。しかしたったの7年でその株を日本のソニーに売り渡しており、拡大戦略には苦い過去もある。


また、日本では個人も企業もお金を(時には意味もなく)貯め込む習性があるのに対して、アメリカでは個人も企業も(時には過剰に)気前良く使う、そして使わないのなら世話になっている人(株主)にお返ししてイメージを上げる、という習性がある。(貯め込んだ場合の)市場での被買収リスクも日本に比べても格段に大きいこともある。



今後のCoca Cola に求めることとしては、


ゴミ箱投資なんてどうだろう?


Coca Cola は言うまでもなく社会性の高い企業である。スポーツ投資を始め、社会貢献活動も多く行っている。また途上国を始めとする、世界中の国々に拠点があり、日本ではコンビ二もないような過疎地に多くの自動販売機を持つ。このような特性を活かして、世界中のいたるところ、特に途上国や、先進国でも田舎町にゴミ箱を設置する。ゴミ箱は、当然Cokeをかたどったクールな、それでいて道行く車からも目につくような巨大なものにすれば、宣伝効果はあるはずである。ゴミ箱設置だけでなく、ゴミ回収もしなくてはならないが、これは地元自治体などと話し合った上で、(社会性を理解してもらい)協力して行っていくことが望ましいだろう。


最後に、Cokeが何故これほどまでに(特にアメリカで)BIGになったのか?

こんなエピソードがある。


When the United States entered World War II, The Coca-Cola Company began providing free drinks for soldiers of the United States Army.

第二次世界大戦中、Coca Cola Co.は戦士達に無料でCoke を振舞った。


The popularity of the drink exploded as American soldiers returned home from the war with a taste for the drink.

大戦が終わると戦士達はそのCoke のテイストとともに帰国し、そしてCoke の人気が爆発した。


日本人には少々複雑なエピソードだが、企業のあるべき姿、そして企業がその(社会的)役目を果たしたとき、それはBrandという形で利益を運んで返ってくる。Coke が今から100年後も、そのクールな赤いロゴとともに人々の心を潤わせている姿が目に浮かぶ。






2007年8月30日木曜日

Coca Cola Co.-財務

8月29日終値$53.51

財務分析といっても、これほど大きな企業ともなれば財務諸表から目に見える欠点や問題は通例見られない。Coca Cola も例に漏れず、非常に健全な財務内容である。

その中で特徴を挙げると、株主重視の姿勢であろう。

Coca Cola は 06年のNET CASH PROVIDED BY OPERATING ACTIVITIES (営業活動によるキャッシュフロー)は$5,957million(6,910億円、1ドル116円換算)である。そして、そのうち配当に回した資金が、$2,911million(3,377億円、同)と配当性向はまさに48.9%と企業としての利益の半分近くを配当として株主に還元している。

さらに注目すべきは Coca Cola の Share repurchase activity (自社株買い活動)である。自社株買いは市場に出回る株数を減らし、一株あたりの価値を向上させることから、間接的に株主還元の行為となる。また、企業としても戦略的に自社株の流通をコントロールすることで、買収者を牽制するなど様々な効果があるため、昨今大企業の間では盛んに行われている。Coca Cola は06年にこの自社株買いを$2,474million (2870億円、同)も行っている。

Coca Cola は Annual report に公表している02年からの4年間で、Net operating revenues (売上)、Operating income (営業利益)、Net income (純利益)とほぼ全ての主要財務項目でプラス成長を遂げている(02から03年の営業利益のみ減少している)。しかしその一方で、Average shares outstanding (市場流通株式数)は一貫して減らしているのである。これは上の Share repurchase activety を盛んに行っている証拠であり、利益を成長させるのみでなく、自社株を減らすことによって、両面から一株あたりの利益を向上させ、株主に還元している。


Net Operating Revenues(in millions)
2004$21,742
2005$23,104
2006$24,088


Operating Income(in millions)
2004$5,698
2005$6,085
2006$6,308


Share Repurchases(in millions)
2004$1,754
2005$2,019
2006$2,474

Dividends Per Share
2004$1.00
2005$1.12
2006$1.24

2007年8月24日金曜日

Coca Cola Co.-ブログ

8月23日終値$53.98


Coca Colaに関するブログを分析してみた。


まずこちらはBloggingStocks というサイトから(株式市場の)専門家の投稿のようだが、



昨今の世界的な株式市場の暴落の中で、Coca Cola は非常に安定している(直近52週高値の$56.71から3ドル弱しか下げていない)ことを強調している。


"you can always count on Coca-Cola, no matter what condition the economy is in."

「どのような経済状況にあってもコカコーラから目を離してはいけない」


などという格言もアメリカにはあるようである。



こちらはアメリカで大ブームになっている動画投稿だが、



Coca Cola が障害者(聾唖者)に配慮している、というCMが投稿されている。しかし Pepsi が盲人に配慮しているのに対抗して、聾唖者にメッセージを送っているという「競合戦略」が露骨であり、少々モラルに欠けている気もする・・・



こちらは日本のブログ、コカコーラゼロに関してですが(ゼロに関する投稿は最近非常に多い)、



あまり美味しくないそうです・・・これには正直私も同感なのですが(黒いパッケージはクールだが)、


やっぱコカコーラは普通がいい。クラシックがいい。時代は変わる。Coca-Colaは変わるな


この意見にも強く同感です。










2007年8月15日水曜日

Coca Cola Co.-Brands (ブランド戦略)


8月14日終値$54.14


Coke と言えばまず連想されるのが、その圧倒的な Brand Value である。2007年のグローバルブランドランキング ( Business week ) でも7年連続の No.1 に輝いており、その Value は $65.3 billion (7.7兆円)と計算されている。


Brand Value の計算方法は複雑だが、Total Asset (総資産)の約$30 billion の倍以上の無形資産を Coca Cola Co. は保有することになる。Coca Cola Co. のPBRは現在4倍以上あり、非常に高い水準であるが、このブランド資産を Asset に計上すると、約1.35倍程度に収まる(適正水準の2倍程度に比べると下回るが)。市場はこの Brand Value をかなり高く評価していることがわかる。


しかし何故にこれほどまでに Brand Value が高いのか(高い Brand Value を維持してきたのか)?これはあまり適切な資料が見つからず、推測を交えて分析してみる。


1.ブランドの歴史

 Cokeブランドの持つ120年の歴史は大きな評価材料であろう。しかもその長い期間において nonalcoholic beverage というドメインをぶれることなく守り続けてきた。地道な努力が、歴史を刻む中で、評価を増幅していったのではないか?


2.デザイン

 くびれのある独特なボトル、赤地に Coca Cola のクールなロゴは消費者の心に大きく染み込んでいると思われる。登録商標( copyright )などが、法制化された根拠は Coke のロゴではないか、と思わせるほどにその商標価値は高い。

 ブランド戦略として注目されるのは、昨今のペットボトル全盛期の中で、各社コスト削減のためにボトルの標準化を図っている中で、Cokeだけはくびれのあるボトル(生産コストは他のボトルより高くつくはずである)を頑なに使用している。要するにコスト(削減)よりも、ブランドイメージの維持を優先している戦略は明確である。


3.グローバル展開

 現在 Coke は200以上の国々で売られている(2004年アテネ五輪参加国が202国)が、そのうちの90の国では、地元の人々によって生産されている。中には途上国もあるだろうし、そこで働く労働者や、工場のある街の人々にとっては Coke は胸に大きく刻まれるであろう。

 さらに、それらの多くの国々で独自のブランド戦略をとっているため、それぞれの国にあった形で Coke ブランドが浸透していくようなシステムをとっている。典型的な例は日本である。日本では Coca Cola そのものは(欧米に比べて)人口に比してそれほど多く飲まれていない。しかし日本コカコーラは、(欧米にはなく)日本飲料市場で大きな地位を占める缶コーヒー市場を強化し、ジョージアブランドを育て、40%近い圧倒的シェアを誇っている。そのジョージアが市場に浸透していく背景に Coke Brand が寄与していたことはゆるぎない事実であろう。


さらにスポーツイベントへの協賛や、独特のテレビCM戦略などマーケティング戦略も一流ではあるが、それらはブランドが先か、後かという議論もあるだろう。要するに、これだけの圧倒的なブランドを持てば(その歴史の中でブランドを築いていく数々の苦労はあっただろうが)、マーケティングは比較的容易に優位に進められるのではないか、ということである。




2007年8月12日日曜日

Coca Cola Co.-Competitive Advantage (強み)

8月10日終値$54.98

Coca Cola 程の大規模な会社となると、「経営戦略」というくくりではあまりにも広くなってしまって、ありきたりになってしまいがちである。よって今回は Chairman's Letter から Competitive Advantage (強み)を抜き出してみた。

以下本文そのものをコピーして分析してみる。

Retaining our competitive edge requires an intense, unrelenting focus on what our Company is all about—beverages. More than 1.4 billion servings of our products are enjoyed every day—nearly a million servings every minute. For 120 years, beverages have been our business, and we remain focused on being the strongest nonalcoholic beverage company in the world. With four of the world's top five nonalcoholic sparkling brands, our leadership position is clear. And it has given us the expertise to lead in several other beverage categories: Worldwide, we are No. 1 in sales of juice and juice drinks; No. 1 in sales of ready-to-drink coffees and teas; No. 2 in sales of sports drinks; and No. 3 in sales of water.

120年という長期の歴史の中で beverage business にフォーカスしてきた。その beverage の中でも nonalcoholic (ノンアルコール)の分野に特化してきた、ということを強調している。一見儲かりそうなアルコール(ビールなど)に手を出さずに、ドメインを頑なに守り続けてきた、という自負が感じられる。

その結果 nonalcohllic sparkling beverage では世界の5大ブランドの中の4つを占め( Coca-Cola, Diet Coke, Sprite and Fanta... 残りの一つは言うまでもなく pepsi であろう。しかしどのような基準でこのトップ5を定義しているのかは不明・・・Coke と Diet Cokeを分けているし、Fanta のシェアはそれほど高くないと思われる。 )

The geographic diversity of our Company gives us balance. As a general rule, when some markets are down, other markets are up. We are able to grow our unit case volume in spite of challenging markets. What did this mean in 2006? A year of flat unit case volume growth in North America and declining unit case volume in the Philippines was balanced by double-digit unit case volume growth in other markets, including 10 percent in Argentina, 15 percent in China, 26 percent in Russia and 10 percent in Turkey. We will continue to focus on these and other strong markets, such as Brazil, Mexico and Spain, while we implement customized plans for stabilization and growth in underperforming markets.

ここではグローバル展開の強みを強調している。例として、アメリカでの成長はもうそれほど大きくないが、アルゼンチン(10%)や中国(15%)、ロシア(26%)などの成長がそれをカバーして余りある。要するに Coke ほどのグローバル展開をしていると、どこかの市場が沈めば、どこかの市場が上がる、という具合にリスクを回避してさらに成長へ向かうという戦略が描ける、ということであろう。

Our opportunities for growth are significant. Even in developed markets, only 62 percent of beverages consumed are nonalcoholic ready-to-drink. And in developing and emerging markets—places like China and India with fast-growing populations and ever-increasing spending power—just 40 percent of all beverages consumed are nonalcoholic ready-to-drink. We are capturing these tremendous opportunities by focusing on providing ready-to-drink beverages that honor local cultures, preferences and tastes.

ここではさらに ready-to-drink (おそらく缶飲料などの製品化されてスーパーなどで売られているものを指している、と思われる) に特化しそこでの強みを発揮することで、(遠まわしに)社会貢献をしていきたい、ということを述べているのでは。

とにかくドメインを絞り、そのドメインに(規模を活かして)投資を集中し、他社を引き離していく、という戦略であろう(やはりありきたりだが・・・)。しかし nonalcoholic beverage の市場をこれほど拡大させたのは Coke である、といっても異論はないであろう。

2007年8月9日木曜日

Coca Cola Co.-Mission(経営理念)

8月8日終値$55.86


前回の投稿で抜けていたmarket cap.(時価総額)は

129.24billion(15.25兆円)

である。この数字は普通に見てかなり高額であると言って良いであろう。米国の市場で20番目、日本の市場に当てはめるとトヨタと三菱UFJについで3番目に入ってくる水準である。



Coca Cola CoのMission(経営理念)だが、




  • To Refresh the World

  • To Inspire Moments of Optimism

  • To Create Value and Make a Difference



の3つが挙げられている。要するに



「世界を(世界中の人々を)活気付けて、楽しい一時を与え、何か新しいものを作って行こうぜ!」



という感じであろうか。特に



refresh the world



というのは企業として最も大きなMissionのようである(パッケージにも「refreshing & uplifting」と書かれている)。Cokeは今でこそ当たり前に存在する、スタンダードなドリンクだが、しかし今でもそのテイストは他のドリンクと比べると明らかに異種のものである。それに私達は慣れてしまっているが、当初市場に表れた頃は驚きのドリンクだったことだろう。



「人々に驚きを与えたい」



そして幸せを提供したい、という意味が込められているのではないだろうか。色の驚き、テイストの驚き、のどごしの驚き、私達が今当たり前として捉えているCokeをまた新鮮に見つめなおすと、いろいろな驚きが見えてくる。そして、驚きこそが生活に刺激を与え、そして喜びとなる、ということであろうか。



さらにVisionとして、


  • Profit

  • People

  • Portfolio

  • Partners

  • Planet

5つのPが挙げられている。


Valueとして


Leadership: "The courage to shape a better future"
Passion: "Committed in heart and mind"
Integrity: "Be real"
Accountability: "If it is to be, it’s up to me"
Collaboration: "Leverage collective genius"
Innovation: "Seek, imagine, create, delight"
Quality: "What we do, we do well"




の7つが挙げられている。特にInnovetionのところの



「Seek, imagine, create, delight(探せ、考えろ、創造しろ、楽しめ!)」



というキャッチはクールで個人的に気に入った。

2007年8月4日土曜日

Coca Cola Co.


8月3日終値$53.28

今月は清涼飲料業界(beverage business)の王者 The Coca Cola Companyを分析してみる。

暑い夏、梅雨を過ぎると無性に飲みたくなる。何よりあの赤い、クールなロゴマークに不思議と引き寄せられる。こんな時期にピッタリではないだろうか。


創業は1886年、アメリカにて初めてこのカリスマ飲料が売られたと言われている(法人化は1919年、アメリカはデラウェア州にて申請されている)。昨年でちょうど創業120年。世界的老舗企業として、今では200ヶ国以上で売られている代表的グローバル企業と言って良いであろう。


簡単な財務データとしては


06年 (為替換算1ドル118円)

売上(net operating revenues) $24billion  2.83兆円

営業利益(operating income)  $6.3billion 7,434億円

純利益 (net income) $5.1billion 6、018億円


正直言って売上規模はもっと大きいのかと想定していたが、どのような形でoperating incomeが算出されているのかはわからない。その辺も含めて財務でわかる範囲でみていきたい。どちらにしても(ボトラーや小売店が間に入るので)、我々最終消費者がCOKEに費やす金額は上のものよりかなり大きいことは間違いない。


注目すべきはあの長期投資で世界的に有名なWarren Buffettが溺愛していること(彼は本当に良い企業に長期的に投資することをモットーにしているらしい)、また400以上あると言われるかの有名なブランド戦略であろうか。