2007年7月31日火曜日

サンテック-まとめ

7月31日現在株価¥685

電気工事業という業界は、通常大手電気会社や鉄道会社などの下請け企業として発展してきている例が多い。どちらの系統も今でこそ民間公開企業となっているが、その起源は公共であり、また事業そのものも非常に公共的特性が強い。要するに、その下請け電気工事業もそれらの公共事業を糧としているため、(高度経済成長期は)安定した受注を得ることができたが、その見返りとして親企業(または公共団体)との強い主従関係にあったことが想定できる。

その点サンテックは企業としての歴史は長いものの(1937年創業)、独立系として発展してきており、しがらみのなさが大きな強みと言える

19年3月期単体で売上295.7億円、内訳が官公庁(公共事業)から28.2億円で9.5%、電力会社から35.7億円で12%なのに対し、民間会社から231.8億で78.4%と圧倒的な受注を誇っている。(http://ir.eol.co.jp/ASP/1960?task=download&download_category=yuho&id=1026636&a=b.pdf

(公共や電力会社との)しがらみのなさ、という強みを何に活かすことができるのか、または活かしているのか。

それこそがサンテックが勧めている環境事業ではないか。

サンテックは主な環境事業として太陽光発電や、ESCO事業を行っている。大手電力会社は言うまでもなく電力を売ることが商売であり、電力会社とのしがらみがあると中々ESCO(なるべく電気料金を下げるためのコンサルティング)のような事業は行いにくいし、既存の電気インフラを利用することがより効率的であるため太陽光発電設備工事もあまり歓迎されないことが想定できる。

近年建設業界は電気工事業に限らず苦しい市場環境であり、今後も(国内での都市インフラはほぼ整備されているため)展望は明るくない。その中でサンテックは積極的に海外(アジア)に乗り出し、また「環境」をキーワードに新しい領域をたくましく切り開こうとしている。

ちなみにその厳しい市場環境の中でサンテックは新卒採用を近年大幅に増やしている。

採用数
平成15年4月入社 1名 
平成16年4月入社 1名
平成17年4月入社 2名
平成18年4月入社 10名
平成19年4月入社予定 14名

今後さらなる新しい戦略、展望を抱いていることが、この新卒採用数(サンテックは中途採用も行っている)の推移に明確に現れている。

サンテックから学べることは、(高度経済成長期を終えた)今後の企業経営にはやはり社会性が求められること、そしてサンテックは「(地球)環境」に目を向けることで社会に貢献しようとしていることである。

今後サンテックに期待することとして、昨今原油価格の上昇も天井が見えないエネルギー市場でサンテックには強みである、太陽光発電の更なる品質向上、普及(余剰金も多くテレビCMなどしても良いのでは)に努めてもらいたい

サンテックが保守的なイメージの強い建設業界のなかで、強く生き残り、新しい時代に対応してさらに輝き続けることを期待する。

2007年7月27日金曜日

サンテック-海外事業展開

7月27日現在株価¥650

サンテックの売上の約30%が海外の売上である。

詳しく は19年3月期(連結売上高約312億円)で

東南アジア 約76億円(対連結売上比率24.2%)
その他アジア 約29億円(同9.1%)

と、100億円以上(33.4%)を海外で稼いでいる。

また、アジア事業拠点として
現地法人をブルネイ、マレーシア、タイ、中国(上海)に持ち、

支店をシンガポール、ミャンマー、台湾に、

駐在員事務所をベトナムに持っている。

中国の現地法人(山陽機電技術(上海)有限公司)は連結子会社となっている。米国に現地連絡事務所を持つ。

下は施工例としサンテックHPにいくつか紹介されている画像のうち、シンガポールのリパブリックプラザ(上)と、ブルネイのヤヤサンショッピングセンター(下)である。






上のように海外では大規模な建設工事を請け負っている例が多いようである。日本の資本による投資事業においてその電気工事部門を請け負う有力な受け皿となっていることが想定される。

また海外事業はアジアに集中しており、中でも東南アジアに集中していく戦略をとっているようである。(18年44億18%、19年76億24%)

電気工事サービス業と内需中心の業界において積極的に海外へ乗り出し、そして確実に事業基盤を築いていることは注目すべきである。日本国内においての建設業界を取り巻く環境は以前厳しいものであるが、今後も東南アジアや中東においては大規模建設工事が相次ぐと見られ、経験を強みにしてそれらの市場で(電気工事部門では)強い交渉力を持っていくことが想定される。

2007年7月24日火曜日

サンテック--新規事業展開

7月24日時点株価 ¥656

サンテックの現在(19年3月期)の売上構成は

内線工事 242億 (約75%)
電力工事 46億 (約15%)
空調給排水工事 16億 (約5%)
機器製作 9億 (約3%)
合計 約313億

というところである。内線工事と電力工事でほぼ9割を稼いでいる。しかし、この電気工事関係はサンテックの事業概況にもあるように、近年は競争も激しく、価格も低下している状況である。


このサンテックが新規事業と銘打って力を入れているのが、PFI事業とESCO事業というものである。

PFI事業(Private Finance Initiative)とは、公共事業を民間の資金やノウハウを活用して行うことにより、(公共の)コストを下げようというものである。サンテックは本来独立系であり、公共事業には弱い部分もあったようだが、この新しい時代のシステムによって技術力を活かし、公共分野にも食い込んでいるようである。


ESCO事業(Energy Service Company)とは、一時期話題になった、電気代節約コンサルティングのようなもので、浮いた電気代から何%かを報酬として受け取るという非常にクリアで効率的な事業である。電気工事サービス業における電気配線システムなどのノウハウを活かし、シナジーも想定できる(電気工事からその後のメンテナンス、ESCOまでセットで受注が期待できる、自社の太陽光発電を勧める、など)。



どちらの事業も多角化など、派手ではないものの、電気工事という足元を見つめた堅実な事業と言える。また、ESCOなどは今後「環境」をキーワードにして、さらに市場が広がっていく期待も持てる(そうあってほしい)事業ではないだろうか。

2007年7月22日日曜日

サンテック-経営理念

7月20日現在株価 ¥714

経営理念を遅ればせながら分析する

わたしたちは、自然環境をやさしくまもり、育てます。
わたしたちは、顧客満足をたゆまずに追求します。
わたしたちは、創造的に、積極的に行動します。


2番目の顧客満足、3番目の想像力あたりは企業経営全般的に必要とされる理念である。
注目すべきはやはり1番目(当然1番上に来るのだから最も重視している項目であろう)

環境

大きなテーマの様である。短信でも重要項目として環境をあげている。成熟しつつある業界の中で新しい領域に視点を置いている、しかも「環境」は今(特に米国などで)最も企業経営上注目されているキーワードである。

サンテックは実際太陽光発電への積極対応などでその環境方針を実践している。

また基本方針として

1.生産性の向上
2.事業基盤の再構築

があげられていて(正直あまり独自性のない基本方針である)

また営業利益率5%を具体目標としてあげている。(19年3月期営業利益率1.3%、この業界は労働集約的産業でありながら意外と利益率が低い)

2007年7月14日土曜日

サンテック-資本政策

7月13日時点株価¥732


19年の営業CFが約20億円のマイナスと純利益5.5億円の企業としては大きく見えるが、サンテックは純資産が312.8億円(19年3月末)、自己資本比率67.5%と高い安全性を誇り、業界特性である資金需要の変動に対応している。






また19年3月末で、有価証券13億円、投資有価証券60.8億円、投資不動産38億円(時価ベース)、投資資産約112億円を保有している。19年3月期も約20億円の営業CFのマイナスを、約22億円の投資CFでカバーしており、投資資産を利用して資金需要変動リスクをコントロールしている。



借入金は短期(9.8億円)、長期(0.3億円)合わせて約10億円と資産規模が400億円以上あることを考慮すると安全性には全く影響のないレベルである

2007年7月10日火曜日

サンテック-財務

7月10日時点株価 ¥740

今月は財務分析から入っていく。理由は企業規模が比較的小規模であるため、財務面に存在する課題が企業の継続性に大きく影響してくる場合があることと、またいろいろな順番で分析する形を模索していることからである。

どちらにしても、企業を分析する上でまず、財務諸表に目を通さなくてはならないことには変わりはない。






上は財務データ(収益性)のハイライトであるが、特徴としては年度ごとの変動が大きいことである。特に利益面において変動が激しく、年度によっては(15年度、17年度)赤字に陥っている。また、19年度の最終利益が5.5億円あるにも関わらず、営業キャッシュフローは20億円あまりのマイナスである。


これは一つは建設業における業界特性とも言える。 まず案件ごとの単価が大きいため、工事の完成が多い年度とそうでない年度に差が出てくる。工事進行基準による売上計上により(売上を)平準化することはある程度可能であるが、資材や人件費(外注費)などの費用が先行するためどうしても利益やキャッシュフローに影響が出てくる。

これらの変動やキャッシュフローの遅れに耐え切れず中小建設業ではしばしば倒産が起きるわけだが、サンテックは自己資本の増強によってこのリスクを管理している、といって良い。

サンテックの純資産は19年3月末で312.8億円、自己資本比率が68.4%と非常に高い安産生を確保している。しかも純資産額のうち約80億円(25.8%)を現金として保有している。

これらの資金の多くを株式市場から調達しているため、2.3億円(配当性向約42%)もの多額の配当を実施していることも資本政策上大きな特徴である。

2007年7月4日水曜日

サンテック


7月4日時点株価¥745(単元1000株)


7月は東証2部上場のサンテックを分析する。


サンテックは建設業として、電気工事(主に内線工事を主力としている)を幅広く展開する企業である。


簡単な概要は

19年3月期


  • 売上 312.69億円

  • 経常利益 10.88億円

  • 純利益 5.49億円

上場企業としては比較的小規模である(市場取引も少なく毎日取引が成立する会社ではない)が、会社としての歴史は古く、設立1948年(来年で創業60年)、上場も1973年と30年以上も公開市場に存在している。


建設業界の厳しい市場環境の中で、力強く生き残っているだけでなく、サンテックは業界でも成長が期待されている数少ない会社である。


注目すべき特徴は



  • 業界では大手電気会社や鉄道会社(JR)の下請けとして、公共的に設立された企業が多い中で、サンテックは独立系としてその長い歴史を歩んできた。

  • 労務提供型サービス企業としては珍しく積極的な海外進出をしている。


特殊な業界特性を持つ中でどのように戦略的に発展してきたのか、学ぶ点が多いようである。