2007年4月30日月曜日
トヨタ自動車-まとめ
ここまでいくつかの角度から、トヨタという企業を見てきましたが、
どんなところが「良い企業」なのか、一つのポイントにまとめて見ました。
ドメインを自動車にこだわり続けている。
現時点でトヨタは時価総額で世界のトップテンに入っています。この現在の(市場規模においての)世界のトップテン、または50位以内までの企業をみても、トヨタほど事業ドメインが絞られている企業はないのではないでしょうか?(50位以内の企業の殆どがエネルギー、金融、製薬など独特の業界文化を持つ大企業であり、コングロマリット化している企業も多い。企業形態が複雑で分析の仕様がなく、企業としての魅力も感じられない。)
高度成長期に住宅事業を始めているものの、規模は小さく(1、381億)、金融事業については一兆円クラスの規模(9,969億)を持つが、自動車販売に不可欠な金融商品の提供が殆どである。
これほどの規模、ブランド、資金を持ち、横に広がることなく筒を縦に、縦に伸ばし続けている企業は珍しいのではないでしょうか?これは、資金もブランドもないのに、現状のドメインに見切りをつけ、いろいろな事業に色気を出す中小企業にとっても見習うべき大きな手本であると感じます。
トヨタから学ぶことのできる、企業哲学は、
「自らの企業の事業ドメインを徹底的に見つめる」
ことでしょう。
将来性のない事業領域にある企業は、時にはドメインを移行せざるを得ないかもしれませんが、トヨタの精神的親企業であるトヨタ自動織機は、織機という、正直現在では地味な事業ドメインで、長い歴史を持ち、この時代においても優良企業として立派に存立しています。
そのトヨタ自動織機から喜一郎の起こした社内ベンチャーがトヨタ自動車なのです。
分析していて感じた課題はやはりいくつかありますが、
一つは急成長の後のソフトランディングです。
トヨタはその長い歴史で成長を続けていますが、この2000年を過ぎてからの急激な成長は、おそらくトヨタ自身にとっても想定を超えるレベルではないかと感じます。
トヨタの強みはやはりその効率的な生産方式、これは自働化、およびジャスト・イン・タイムと言われるもので、世界でも模範とされる徹底的な効率化、そしてその結果は営業利益、又は在庫水準に現れてきます。
先に示したように、トヨタの営業利益率は9%前後と、相変わらず高水準であるものの、特に成長が加速している05年、06年はその水準が若干下がっています。
詳しく分析すると、06年3月の貸借対照表では、在庫水準が連結の棚卸資産で3000億円(24%)程度、単体では製品、原材料、仕掛品と全てにおいてその水準が上がり700億円(33%)の増加となっています。このあたりの数字から急成長の裏にある現場の小さな悲鳴も聞こえてきます。
もう一つはグローバル展開の今後です。
トヨタでは端的に言うと現状国内生産(468万台)の約半数を海外、主にアメリカへ輸出しています。これはアメリカ等の販売好調な地域には工場誘致を進めている反面、国内生産も守り続ける強い意志が感じられます。
しかし日本国内も北米も今後は自動車需要そのものは頭打ちになってくる中でシェアの奪い合いになってきます。一方今後需要の伸びが予想される中国、インドなどでは日本での生産輸出では、物価のギャップが大きいため、現地生産で対応していくしかありません。この地域での遅れをどのように取り戻していくか、期待されます。
最後に今後のトヨタに期待することです。
トヨタは今年にも、世界ナンバーワンの製造業となり、その後短くても10年はそこに君臨し続けることでしょう。自動車事業の市場で戦ってきたトヨタの市場的指名はここである程度区切りがついたと思います。今後も今の2倍も3倍も自動車を売り続けることは不可能ではないが、それはトヨタの進む道ではないでしょう。
今後は社会的使命を、世界の舞台で果たしてもらいたい。現在行っている自動車の環境適応化はもちろん、トヨタの培った生産ノウハウを中東や、アフリカなどの途上国でも布教活動のように広めて欲しい。ムダのない、効率的な生産ノウハウは、現地へ送る食料以上に長期的には彼らを救うことになるはずである。
素晴らしい企業、トヨタが、今後も素晴らしい企業活動を展開していくことを確信しています。そして素晴らしい企業の経営参加(株投資)をすること、できることはまた素晴らしく、そして安全である、ということです。
2007年4月29日日曜日
トヨタ自動車-財務2
簡単にまとめると
- 営業CF 2兆5154億(純利益1兆3721)
- 投資CF -3兆3755億
- 財務CF 8769億
- (為替換算差額 687億)
純利益による、CF貢献額が1兆円を超えているところはもちろんすごいのですが、成長している中で有形固定資産を、賃貸資産をあわせると期間中に2兆7,712億購入しています。
上の固定資産の購入額ですごいところは、その額が期間中の営業CFを超えているところです。通常の安定優良企業のセオリーは、営業CFの範囲内で(将来に向けた)投資をする、ということですが、トヨタのような歴史のある、超メガ企業が新興企業のように営業CFを超える投資をしているわけです。
さらなる成長への貪欲さ、が感じられます。
また財務CFの内訳の中で、
- 配当金 2445億円
- 自己株式取得 1296億円
ちなみにトヨタの持つ現金および現金同等物は1兆5693億円、
この額はどのような額か、というと
例えばトヨタがPC市場に進出しようと思えば、富士通(時価総額1兆5649億)を、
原材料の鉄鋼事業に乗り出そうと思えば、神戸製鋼(同1兆3239億)を、
それぞれキャッシュで買収してしまうことが可能である、という額です。
(と言ってもトヨタはそういう強引な反社会的拡大政策をとるような企業ではありませんが。)
次にトヨタの国家貢献度ですが、
トヨタは18年3月期で、約8000億円(7,951億)の税金を国に納めています。同期間の国全体の法人税収が約13兆円ですから、国の税収の6.2%をトヨタが企業として収めているわけです。日本に企業は約430万程度存在するので、一つの企業が税金をそれだけ(6%)払っているというのがいかにすごいかがわかります。
またトヨタには連結にすると28万6千人程(単独65,798人)の従業員を抱えているため、彼らの納める所得税も合わせたなら、ものすごい金額をトヨタは国に納めていることになります。
まさに、トヨタは国家財政を支えているのです。
2007年4月28日土曜日
トヨタ自動車-財務1
時期的にすごく中途半端になってしまうのですが、トヨタの07年3月期の決算発表は連休明け(9日)です。通期の決算分析にこだわるとちょうど一年前のものになってしまいます。ブログ的に月末でまとめたいと思っているので。
ただトヨタについては、その驚異的な成長率と、健全な財務状況という観点では昨年も今年もそれほど変わりない、と思います。
ということで06年3月期の主に決算要旨の分析によるレポートです。
まずは700を超えるグループ企業の説明です。
中でもダイハツ工業、日野自動車、 アイシン精機、デンソー等の売上高一兆円を超える大型、優良企業をグループ企業に抱えています。
トヨタを支える底力を感じさせられます。
また経営戦略として、短期的には、レクサスブランドの育成を始めとする国内販売の強化、中長期的にはやはり、環境性能を始めとした、高品質な製品のさらなる追求と、「社会貢献」、「CSR」というキーワードが多く使われています。
いよいよ財務データに入ります。
それぞれ特筆すべき、財務数値を上げていきます。
まずは売上高
06年3月期で21兆369億円
ですが、さらに驚くべきは売上高の伸び率が13.4%、金額にして2兆4、854億円です。トヨタはこのレベルの成長率をここ数年続けています。
次に営業利益1兆8、783億円
この数字は円高による増益要因(約300億円)が、大きく寄与しているとはいえ、注目すべきは営業利益率(8.9%)である。
やはりトヨタはこのレベルの営業利益率(9%前後)をここ数年続けているわけだが、
4月27日付けの日経新聞3面の記事で、日産自動車がカルロス・ゴーン就任以来初の減益、さらに営業利益率(ゴーンが最も重視する指標)が7.4%(前期9.2%)に低下したことも紹介している。あのゴーンにして、9%レベルの営業利益水準を維持することは、困難であることがわかる。
さらに財務分析を続けていきます。
2007年4月25日水曜日
トヨタ自動車-ブログ2
今日のニュースでトヨタ自動車が4半期で初の販売台数世界一になった、と発表されています。このまま通年での世界一達成もまず間違いないでしょう。日本人として素直に誇りに思います。
引き続きブログ検索の結果です。
こちらのトヨタ自動車19年度新入社員の方のブログがとても興味深いです。
http://blog.so-net.ne.jp/k-mossan1982/
「自分は今日からこんなすごい会社で働くかと鳥肌が立ちました。身震いしました」
今年度の入社式から、新入社員研修まで、とても細かく紹介してくれています。ちなみにこの方、東京大学の学院卒のようですね。すごい会社に、すごい人材がまた入っています。
このような社員ブログを探しているのですが(当然多数存在するのでしょうが)、他に適当なものがうまく見つけられませんでした。
今、トヨタには世界が注目しています。世界一の製造業として、社員の方々もできる範囲で情報発信して頂くことを期待します。
2007年4月22日日曜日
トヨタ自動車-ブログ1
現代の企業、これからの企業は大企業とはいえ、やはりブログの世界というのは見逃せない、無視できない世界だと思います。今、そういう本も読んでいるのですが。
ちょっと表面的な分析なのですが、下にいくつか並べます。
http://lexustoyota.livedoor.biz/archives/52482114.html
「主に妻が運転していますが、取り回し易さ 安全性 使い易さ 非常に満足しているそうです。外車のようなブランド力は必要としない方、普通に良く出来た車を所有したい方におすすめです。」
レクサスについてのコメントですが、「普通に良くできた車」というのが、トヨタをうまく表現してます。
http://che-kibara-school.seesaa.net/article/34330010.html
「知事専用の公用車について、当初は「廃止する」と述べていたが、燃費や他の手段を使った場合のコストなどの問題を考え、車種をトヨタ自動車の「トヨタ・センチュリー」から、ハイブリッドカーである「トヨタ・クラウンセダン」へ乗り換え、これにより年60万円の公費削減となった。」
今話題の東国原宮崎知事が、ハイブリッドカーで環境配慮のアピールをしているという記事です。
http://ameblo.jp/murakamizeirisi/entry-10027795810.html
「トヨタ自動車株で損をした人はいないのでは。」 「でもトヨタの事ですのでまた上がるでしょう。今まで裏切られたことがないので。」
こちらの投稿などは、私のブログのコンセプトである、チャートの動きなどに惑わされずに、調査を重ねて本当に良い企業の株を買うことは安全である、という裏づけをしてくれています。
ちょっとだけ海外も見てみました。(本当は海外での評価の方が重要なのですが)
http://www.informationarbitrage.com/2007/02/toyota_has_won_.html
「Bottom line, as great as I think Toyota is as a car company and, more importantly, as one of the greatest companies on the planet」(要するに、トヨタは素晴らしい自動車製造会社というだけでなく、この世で最も素晴らしい企業の中の一つだと私は思う。)
流し読みですが、TOYOTAを絶賛してます。
次回はできればもう少し時間をかけて、トヨタ関連のブログを分析してみたいと思います。
2007年4月19日木曜日
トヨタ自動車-製品戦略2
プリウスは今年(2007年)で誕生10周年、昨年には販売50万台を達成している。しかし今や年間800万台を販売するトヨタにとって、年間平均にすれば5万台程度のプリウスが数字的にそれほど大きな意味をなしているとは言えない。
プリウスのトヨタにおける意義は言わずと知れた環境性能である。
プリウスはトヨタのハイブリッドシステムの代表車として、販売された。ハイブリッド(THSトヨタハイブリッドシステム)とは、要するに、ガソリンによるエネルギーと、電力によるエネルギーを状況に応じて効率良く利用する、というものである。(具体的にはとても複雑なシステムなのでサイトを見ていただきたい)
特に停車時に発生する余分な熱エネルギーを蓄積して、効率的に利用する、という仕組みは言葉にしてしまえば簡単だが、実際にはものすごい技術だと感じる。
また何かと未来自動車として話題になる電気自動車(EV)に比べ、既存のインフラ(ガソリンスタンド)で対応できるところが現実的であり、これほど早期に大量の販売を成し遂げた理由の一つでもあるだろう。
さらに効率良くエネルギーを利用することで燃費は35.5/リッター(最大で?)と、原油高が予想される今後も継続的に売れ続けるはずである。
何よりこうした環境対応、エネルギー研究の姿勢はトヨタのブランド力を大きく押し上げる原動力になったことは言うまでもない。
正直言って近年のトヨタの成長率は、理屈では説明できない大きな流れがトヨタに向いていると感じさせることがある。しかしその大きな流れの受け皿となったトヨタは紛れもなく大きな力と素晴らしい製品を持っている。
2007年4月14日土曜日
トヨタ自動車-製品戦略1
今回は製品戦略について考える。
その前にまず注目すべきは、近年のトヨタ自動車の成長率である。
左のグラフを見て頂きたい。02年から06年までの4年間で売上は実に50%の成長を遂げている。売上1億の会社が1億5千万に伸ばすのも大変なことであるが・・・14兆から21兆に伸ばすとは、まさに驚きである。
(ちなみに営業利益は同期間で70%の成長率である)
これだけの成長をしている要因は
- ブランド力
- グローバル展開(特に北米の強化)
- 環境対応車(プリウス等)の先行
が主なものとしてあげられる。特に3の環境対応に着目してみた。
とにかくどれほどうまい営業文句を並べたところで21兆円も製品が売れるものではない。
こんなに売れているのは品質、商品力にほかならない。
その点でトヨタの近年の成長を代表する製品はプリウスであろう。
良い企業は、良いものを売る。
キーワードは「環境」、次回はプリウスについて少し分析してみる。
2007年4月10日火曜日
トヨタ自動車-経営戦略
ドメインは当然、「自動車」の製造、販売である。(住宅事業も比較的大きく展開している)
経営理念は、HPにある「基本理念」を簡単にまとめると
- 法令遵守
- 品質志向
- 研究開発
- 労使相互信頼
- グローバル経営
と、どれも今時当たり前のものばかりであるが、経営においてその当たり前のことを実践するのが難しいのであって、トヨタはこれらの当たり前のことを、どれも高いレベルで実践している。
さらに「基本理念」のページで注目されるのが、
トヨタ綱領 である。
これは豊田佐吉(豊田グループの創始者、私の小学校の先輩・・・)の遺訓を1935年に息子の喜一郎らがまとめたものらしいが、とても興味深いものなのでコピーさせて頂いた。
・上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし
・研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし
・華美を戒め、質実剛健たるべし
・温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興すべし
・神仏を尊崇し、報恩感謝の生活をなすべし
注目すべきは3つ目の「質実剛健」という四字熟語である。
質実剛健とは、辞書で調べると、要するに
「飾らず、まじめで、たくましい」
と言うことである。
まさにトヨタの経営戦略を見事に表現している一言と言ってよいのではないか
2007年4月4日水曜日
トヨタ自動車
本日4月3日の終値で7420円、1単元100株で現物買いの場合約74万円が必要です。
ブログのコンセプトは、良い企業の研究です。良い企業、社会のためになっている企業に投資することは、社会貢献につながるとの考えからです。(株投資による金儲けがコンセプトではありません。)
真っ先にトヨタを選んだのは、トヨタが言わずと知れた世界的な「良い企業」であるからです。
では一体どんなところが「良い」のかをできる範囲で分析していきます。
まず基本的な情報をまとめてみました。(数字は概算です)
時価総額 26.7兆円(07年4月3日現在)
06年3月期
- 売上 21兆円
- 営業利益 1.87兆円
- 純利益 1.37兆円
- 生産台数 770万台
- 販売台数 800万台
もう少し詳しく分析していこうと思います。